女御主人様と仕事帰りに落ち合い、自宅に戻る帰り道。
時刻は既に午前0時をすぎています。
女御主人様は既にご友人とイタリアンを食べられていたようでした。
仕事が忙しくお昼から何も食べていなかった僕はご飯の話になって空腹感が沸き起こってきました。
「お弁当にします。」
普段から帰りが遅いので、帰路にあるお弁当屋さんはよくお世話になっています。
家に着くなり僕は買ってきたお弁当をレンジに入れて温めました。
やっとご飯にありつけ、蓋を開けたその時です。
『誰が、食べていいと言ったの?』と女御主人様から一言。
やっと食べれるはずだった遅い夕飯…女御主人様の急な一言に言葉が出ません。
後ろ髪を引かれながら、諦めた僕はプラスチックの蓋をゆっくり閉じてうつむきました。
『お酒』…女御主人様からご命令です。すぐにご準備をしなければいけません。
気持ちを切り替え、キッチンで支度をします。部屋に戻ると女御主人様はベッドに寛いで、テレビをご覧になっていらっしゃいました。
僕はワインを開け、ゆっくりグラスにお注ぎいたします。ご準備したおつまみはお皿を両手で高く捧げ持ち、床で正座待機です。
お腹が減っている時の人間は素直です。空腹感から、つい目の前にあるおつまみに目がいきます。
お皿を捧げ持っているので手は使えませんし、この状況で勝手につまむことなど許されないでしょう。
ワインをお飲みになっている女御主人様が時折つままれる乾き物を羨ましく眺めていました。
テレビの声が聞こえてきて、ゆっくりした時が過ぎていきます。
女御主人様の食後の晩酌にうらやましい気持ち、ひどいと感じる気持ちが入り混じります。
お皿を持つ腕も少しづつ辛くなってきて震えてきました。
しばらく経った後、女御主人様は、僕が捧げ持っていたお皿を取り上げられました。
腕の疲れと空腹感から開放されると思い少しホッとしました。
しかし次の瞬間、女御主人様からいただいたのは、、。マッサージのご用命でした。
追い打ちをかけられた気持ちがしましたが、「やっとご飯、、」と淡い期待を思った自分がばかでした。
僕は蓋の閉じたお弁当を横目にマッサージを始めました。
マッサージ中もおつまみを噛む音に敏感になり、反応してしまって惨めになります。
イタリアンを食べてお酒を飲み、ベッドに寛いでマッサージを受けられる女御主人様。
終日仕事で忙しく、お昼から食べる時間がなかった僕、。
何故食べさせてもらえないんだろう、。お弁当冷めちゃったなあ、。…様々な気持ちがよぎります。
『そんなのだといつまでたっても食べられないよ。』
女御主人様からの一言に僕は緊張しました。注意が散漫していたのかもしれません。
機嫌を悪くすれば僕はこのままご飯抜きになってしまう、それだけは避けたいと感じました。
僕は気を取り直し、媚びるように丁寧にマッサージを続けました。